光と風と水と。

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人が変わるには、一日で十分。嬉しいハガキ、メール。

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ByMari

ぶらぶらした気分で、昨日今日とをすごす。

『スプートニクの恋人』は、早くも、読み終わりそう。

わたしの記憶に残っていた、一番印象的だった場面にようやく差し掛かり、
「こういうことか」と、納得。

以前読んだのは、おそらく、学部生のとき。
でも、正直、ただ読んだだけで、その言わんとしていることが、よくわからなかった。

今読んだら、ちゃんとこの物語の言わんとしていることが、正確に分った。

小説って、こういうことがあるから、面白い。

小説には、読む時期・タイミングがある。
読み手の経験のレベルがある。
経験してから、初めて、そこに書かれていることがわかる場合がある。
だから、小説は、時間をおいて、読んでみると、
まったく別物になって、再び立ち現れるからおもしろい。

今回共感したのは、
意外にも、ギリシアの離島から帰ってきた後の、語り手「ぼく」の心情。

ここからはネタバレになってしまうので、
未読の方は要注意。

ギリシアの離島で、主人公すみれは煙のように消えてしまうのだけど、
「ぼく」はその背景を、すみれの手記を読みながら理解しようと試みたり、
月夜の丘で不思議な体験をしたりする。

で、結局、すみれを見つけることはできないまま、
春休みが終わり、仕事を再開しなければならず、日本に戻ってくる。

その日本に戻ってきたときの、「ぼく」の描写が、
なんともいえず、わたしが経験した心情とだぶった。

ぼくは明日になれば飛行機に乗って東京に戻る。
すぐに夏休みが終わり、限りなく続く日常の中に再び足を踏み入れていく。
そこにはぼくのための場所がある。
ぼくのアパートの部屋があり、ぼくの机があり、ぼくの教室があり、ぼくの生徒たちがいる。
静かな日々があり、読むべき小説があり、ときおりの情事がある。

 にもかかわらずぼくはもう二度と、これまでの自分には戻れないだろう。
明日になればぼくは別の人間になっているだろう。
しかしまわりの誰も、ぼくが前とは違う人間になって日本に戻ってきたことには気づかないはずだ。
外から見れば何ひとつ変わっていないのだから。
それにもかかわらず、ぼくの中では何かが焼き尽くされ、消滅してしまっている。
どこかで血が流されている。
誰かが、何かが、ぼくの中からから立ち去っていく。
顔を伏せ、言葉もなく。ドアが開けられ、ドアが閉められる。明かりが消される。
今日がこのぼくにとっての最後の日なのだ。
夜が明けたら、今のぼくはもうここにはいない。この身体にはべつの人間が入っている。



一日にして、
人間が一気に変わってしまうことって、ある気がするのだ、最近。

絶対的な体験のようなもの。

一晩にして、髪の毛が真っ白になることだって、おかしくない気がする。

そんな、ドラマみたいなことって思うんだけど、
でも、誰しも人生のうちで、いくつかはあるんだとおもう。

村上春樹って、そういう人間の奥底にあるパンドラの箱みたいなものを、
綿密に導入部分を作ったうえで、頂点で開けてみせるよね。

『スプートニクの恋人』は、とくにそんなパンドラの箱を思わせる話だった。

人間、誰しもにパンドラの箱ってあるよなって。

でも、表面的には、わからないんだよね。
その経験の前も、後も。どんなふうに変わったか。
人からは、わかりにくい。
でも、自分にははっきりわかる。

人は、そういう経験を重ねて、人間としての深みを作っていく。
経験は決して、悪いものじゃなくて、大切。

なぜか、この小説を読みながら、何人かの人のことを思い出した。
「もう一回、話したいな~」と思った。
その人たちは、その人たちで、一人でいたいかもしれないけど。
忙しすぎて、それどころじゃないかもしれないけど。

なんか、自分のエゴや煩悩はもうどうでもいいから、
ただ、話したいんだな、そういう深い話を。
ゆっくり、率直に、しみじみと。

hana

帰宅して、メールをチェックしたら、
数日前にごあいさつした先生から返信が来ていた。

その内容に励まされ、また新たなチャレンジのアイディアが浮かぶ。

研究以外にも、いろいろしたいことが山積みなんだけど、
研究にしろ、仕事や、趣味にしろ、
これだけって限定してしまわず、
思いついたことはすべて、ふいっとチャレンジしてみようかなと思う。


そして、仕事から帰ったわたしの前に置かれた、一枚のはがき。

北欧・フィンランドから届いた、
わたしの大好きな友達からのエアメールだった。

北欧で、初めての一人旅しているとのこと。

異国の香りと、旅している友達の気配が、そのまま伝わってきた。

旅先からの手紙って、やっぱり、とってもうれしい。

人生も十分ドラマティックだよね。

最近、ほんとほんと、そう思う。
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