こころで感じた教会。遠藤周作『深い河』

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先日、一人で散歩中、
偶然、石造りの古い建物を見つけて、
「横浜のここらへんだから、昔の銀行とか、役所かな」なんて、見ていたら、
『会堂が開放中』と書いてあり、入ってみた。

入ってみてから、気づいた。

教会だった。

受付のところにおじさんが立っていて、
なんとなく、気恥ずかしい気持ちになり、
「開放中って書いてあったので、入ってきてしまったんですが」
と云ったら、
「どうぞどうぞ」
と、さらに奥の部屋につづく、扉を開けてくれた。

長椅子が並び、
奥には祭壇とドーム型の壁。

誰もいなくて、
パイプオルガンの音だけが、厳かに鳴り響いていた。

振り返ると、
入口の二階部分に、立派なパイプオルガンがあり、
そこでちゃんと女性が弾いていた。

生演奏に驚いたのと、音がそのまま体に振動してくるようで、感動した。

落ち着きない気持ちだったけど、
とりあえず、前から三番目の椅子に座ってみた。

おじさんが、あとから、
パンフレットを持ってきてくれた。

パンフレットには、その礼拝堂について書かれていた。

その礼拝堂は、
きらびやかな装飾や、祭壇、マリア像はなく、
十字架やキリスト像さえもない、という特徴が書かれていた。

聖書の言葉に耳を傾ける場であり、
神さまに礼拝するための場所。

「聖なる虚空間」と呼ぶ人もいる、とあった。

「そうなんだ」と感心して、
目の前の祭壇部分を見てみれば、
たしかに、あるはずの、十字架やキリスト像も一切ない。

牧師さんが立つだろう講演台はあるのだけど、
あとは、ただの白い壁があるだけ。

そのとき、とても不思議な感動が、わたしの胸に訪れた。

「神さまは、わたしたちの中に、いるんだ」

そう深く感じた。

なにか外のものに祈るのではない。

目に見えないけれども、
祈っていることで、内にそれをみるような。

・・・うまく言葉に説明できないけれども。



どうも12月になると、
キリスト教的なものに触れる機会が増える。

先日も、たまたまなのだが、
屋根裏の倉庫に本を探しに上がったら、
高校時代のレポートの束が見つかった。

高3の卒業制作で書いたレポート、
『深い河の底でみつけた神様~遠藤周作『深い河』を読んで~』が、出てきた。

ざっと読んでみて、驚いた。

今と、まったく変わっていない。

高校三年生にして、すでに、おんなじようなこと書いてる!!

信仰と神について、
自分の考えを、
高校三年生のわたしは、遠藤周作の『深い河』をもとに、一生懸命語っていた。

遠藤周作の言葉を借りて。

以下、私のレポートに書いてあったこと。

これらの登場人物たちの話が意味しているものは、
神は一つの物に囚われない事だと思う。

大津のいうように、『神は愛の塊り。愛の働き。』であり、
それは宗教に囚われず、
人間や自然の中にも存在する。

それを神と呼ぶ人もいれば、愛と呼ぶ人もいる。

はっきりと認識せずにただただ心で感じている人や、具体的な物や自然や人間に感じる人もいる。

宗教を信仰する人にも、無宗教の人にも、無神論の人にも、
必ずそれは存在する。

そして、そのように姿形を変えながら、人間一人一人と共に生きているもの。

一人一人と共に苦しみ、一人一人を理解し、一人一人を包んでいる何か。

共にあるからこそ、この世の人間の罪も弱さも悪い部分も含めて、
人間を包み込んでいる何か。

未だに戦争がおこり、貧困も消えず、人間の辛苦があふれている世界の、
その辛苦の中にも存在している何か。

それが、遠藤周作のいう「神」だ。

私が『深い河』が遠藤周作の集大成だと思った理由は、
この「全ての人に存在する神」が表現されているところだ。

読み手がどんな人であろうと、
「愛の塊り」である何かの一片を見つけられる。

その何かをみつけ、じぶんの中にもそれがあることに、気づく。

この作品を読む事が、まさに、「深い河・ガンジス」に入ることと同じなのだ。

神と共に生きる人間の河、深い河のあることを、読者もあらためて知るのだ。


レポートを読んで、なんだか、涙がこぼれてしまった。
自分の言葉なのにね。



簡素な礼拝堂で、
パイプオルガンの音に包まれて。

受付のおじさんにお礼を言い、外に出て、
冷たい風に吹かれて、歩きながら、
もう、降りれないんだな、と思った。

上のほう、を感じた。

空とか、天とか。

じぶんが上へあがっているのか、
空が降りてきてくれたのか。

とても気持ちよく思った。

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